電子帳簿保存法のファイル名ルール — 「取引年月日_取引先_金額」で何が満たせるか
メールやWebで受け取った請求書・領収書のPDFは、2024年1月から「電子データのまま」保存し、あとから探せる状態にしておく義務があります。会計ソフトを使わずフォルダで管理している人にとって、いちばん手軽な方法がファイル名に必要な情報を入れることです。この記事では、国税庁が認めているファイル名の付け方と、その根拠、そして「自分は本当にやる必要があるのか」を整理します。
結論:ファイル名は「取引年月日_取引先_金額」の3項目
国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」は、検索機能を確保する方法として、規則性のあるファイル名を付けてフォルダに保存するやり方を認めています。そこで示されている例が次の形です。
20210131_㈱霞商店_110000 (2021年1月31日、㈱霞商店、110,000円)
つまり、次の3つがファイル名に入っていれば足ります。
| 項目 | 書き方の例 | 補足 |
|---|---|---|
| 取引年月日 | 20260921 | 西暦8桁が扱いやすい。並び替えたときに日付順になる |
| 取引先 | ㈱霞商店 | 正式名称でなくてよいが、社内で表記を統一する |
| 取引金額 | 110000 | 税込の総額。カンマ・円記号は入れない |
区切り文字はアンダースコア(_)が一般的です。順番は決まっていませんが、年月日を先頭にするとフォルダ内で自動的に時系列に並ぶので、後述の「日付の範囲で探す」が目視でもできます。
なぜファイル名でよいのか(検索要件の中身)
電子取引のデータ保存には「真実性の確保」と「可視性の確保」という2種類の要件があり、ファイル名が関わるのは可視性のうちの検索要件です。検索要件は次の3つからなります。
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索できること
- 日付または金額について範囲を指定して検索できること
- 2つ以上の項目を組み合わせて検索できること
ファイル名に3項目が入っていれば、OSの検索窓に「霞商店」と打つだけで①は満たせます。②と③は、税務調査の際に「ダウンロードの求め」(データの提示・提出)に応じられるなら不要とされています。フォルダ保存の人は普通に応じられるので、実務上は①だけを気にすればよいということになります。
「真実性の確保」の方は、タイムスタンプを付ける/訂正削除の履歴が残るシステムを使う/訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付ける、のいずれかで満たします。フォルダ保存なら3つ目の規程を用意するのが一般的で、国税庁がサンプル(Word)を公開しています。ファイル名の話とは別の要件なので、忘れないでください。
そもそも検索要件が免除される人
次のどちらかに当たる場合、検索要件そのものが不要になります(いずれも税務調査でのダウンロードの求めに応じることが前提です)。
- 基準期間(2年前の課税期間)の売上高が5,000万円以下の事業者
- 電子データを印刷した書面を、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理して提示・提出できる事業者
個人事業主や小規模な法人の多くは前者に当たるため、「法律上はファイル名を整えなくても違反にならない」ケースが実は多数です。それでも、次の理由でファイル名を整えることをおすすめします。
- 調査で「◯月の◯社の請求書」を求められたとき、その場で出せないと調査が長引く
- 売上が5,000万円を超えた年から急に必要になる。過去分をまとめて付け替えるのは大変
- 日常の経理でも「あの請求書どこだっけ」がなくなる。これが一番大きい
付け方の細かいルールと、よくある間違い
| 例 | 理由 | |
|---|---|---|
| 良い | 20260921_㈱霞商店_110000.pdf | 3項目が揃い、日付8桁で並び替えが効く |
| 良い | 20260921_霞商店_110000.pdf | 法人格を省いても、表記が統一されていれば検索できる |
| 避ける | 2026年9月21日 霞商店 ¥110,000.pdf | 金額の「,」「¥」は検索の妨げ。全角・半角の混在も揺れの原因 |
| 避ける | 請求書_霞商店.pdf | 日付と金額がない。同じ取引先が複数あると区別できない |
| 避ける | invoice_final_v2.pdf | 受け取ったままの名前。検索要件を何も満たさない |
金額は「税込の総額」
取引金額は請求書の「ご請求金額」「合計(税込)」にあたる数字です。税抜や小計ではありません。値引き後の支払額が記載されていれば、それが取引金額です。
日付は「取引年月日」
請求書なら発行日(請求日)、領収書なら領収日が基本です。支払期限や振込日ではありません。
取引先の表記は統一する
「株式会社霞商店」「㈱霞商店」「霞商店」が混ざると、検索で取りこぼします。どれでも構いませんが、ひとつに決めて全ファイルで同じにしてください。
元のファイルを直接書き換えてよいか
ファイル名の変更はデータの「訂正・削除」には当たらないとされているため、名前だけ変えるのは問題ありません。ただし、PDFの中身を編集してはいけません。
ファイル名だけで足りないケース(索引簿を使う)
ファイル名に入れられる情報には限りがあります。次のような場合は、ファイル名は連番にして、別に索引簿(Excel・CSV)を作り、そこに日付・金額・取引先を記録する方法が向いています。
- 1つの請求書に複数の取引先・複数の金額が含まれる
- 取引先名が長い、または記号を含んでファイル名に使えない
- 件数が月数百枚を超え、ファイル名の目視管理が現実的でない
国税庁は索引簿の作成例(Excel)も公開しています。ファイル名と索引簿はどちらか一方でよく、併用しても構いません。詳しくは「索引簿の作り方」で説明しています。
まとめ
- ファイル名は
取引年月日_取引先_金額の3項目。国税庁の例は20210131_㈱霞商店_110000 - 範囲検索・組み合わせ検索は、調査時にデータを提示できれば不要
- 売上5,000万円以下なら検索要件は免除。それでも整えておく方が結局は楽
- 金額はカンマなしの税込総額、日付は西暦8桁、取引先は表記統一
- 「訂正削除の防止に関する事務処理規程」は別途必要
ファイル名の付け替えは、手作業でなくても済みます
「電帳法リネーム」は、請求書・領収書のPDFを置くだけで 取引年月日・取引先・金額 を読み取り、20260921_㈱霞商店_110000.pdf の形に一括で付け替えます。処理はブラウザの中だけで行い、ファイルはどこにも送信されません。10件までは無料です。